[委託先団体] 有限会社アスカモデル
[連携大学] 静岡大学農学部 生物資源科学科 教授 山田雅章
道具を使う機会が減る中、子供たちに手と道具を使い、自由な発想のもとでプラモデルを組み立てる喜びや、ものづくり体験をする機会を提供したいと考えました。課題である「臭いのストレス」をなくすため、静岡産柑橘類を原料とした天然由来成分そのもの、および精油を配合した接着剤を作製し、プラモデル用接着剤としての可能性を検討します。また、原材料には摘果果実などの未利用資源を用いる可能性も探ります。
オレンジ、ミカン、アマナツ、ブンタンの果皮を用い、水蒸気蒸留法で精油を抽出しました。この精油中の主成分は、リモネンという物質であることも分析の結果からわかりました。得られた精油に10及び25wt%のポリスチレン(プラモデル用樹脂)を溶かして、接着剤(以下自作接着剤)を試作しました。
[写真2:原料ブンタン] |
[写真3:得られた精油] |
接着試験には、比較対象として市販プラモデル用接着剤のリモネン系、溶剤系とプラモデル用以外の汎用品として溶剤形酢酸ビニル樹脂、α−シアノアクリレート(瞬間接着剤)、エポキシ樹脂の各接着剤を用いました。接着試験の結果は、ポリスチレン濃度10、25wt%ともに約3MPaの接着強さを示し、自作接着剤は、どれも市販の接着剤と同等で良好な接着性能を示しました(図1)。また、ポリスチレンを溶解していない精油のみでも良好な接着強さがありました(図2)。このことから、ポリスチレンを混ぜることなく、天然由来の精油100%でも接着剤として使える可能性を見出しました。
[図1:市販および自作接着剤の 接着性能] |
[図2:各種自作接着剤の強さ] |
モニター実用試験では、「香りがいい」「思っていた以上に接着できている」と好評価が得られました。親子参加の保護者からも、「親子で一緒に体験できたこと自体が良かった」との感想もいただきました。
[写真4:モニター実用試験の様子] |
[写真5:柑橘精油自作接着剤と接着試験結果の展示] |
柑橘類に含まれる精油中のリモネンに注目し、プラモデル用接着剤を作成できることがわかりました。また、精油のみでも接着剤として利用できることから、天然由来100%の環境にやさしい接着剤の可能性も見出せました。天然由来の精油という希少性に着目し、“静岡産柑橘使用とプラモデル” という新たな地場産品の発信と提供も考えていく予定です。
そして、精油から採れた精油の接着剤とプラモデル作りを通じて、子供たちへの環境教育・工作体験という新たな教育プログラムも提供し、プラモデル産業や一次産業の活性化へとつながる活動に広げていきます。