[委託先団体] インフィック株式会社
[連携大学] 静岡文化芸術大学 デザイン学科 教授 小浜朋子
[連携団体] 有限会社ト・ヘン、株式会社Carecon
認知症は早期発見が重要ですが、現在認知症のスクリーニングテストとして活用されている評価方法(MMSE等)には抵抗がある人もいて、早期発見の障壁になっています。有限会社ト・ヘンの佐野氏が考案した「Soundcell Method」は、高齢者の認知機能の評価ツールとしての可能性が検証されています。
[図1:Soundcell Method] |
そこで、本ツールをアプリ化し、楽しみながら評価できることで、被験者からの印象も良く、ストレスの少ない形で認知症の傾向が把握できるのではないかと考えました(図1)。高齢者でも簡単に、安心して楽しみながら使っていただけるようなデザイン性にも配慮した音楽アプリの開発を行いました。
■「Soundcell Method」とは
図2のように、短い音楽フレーズで構成されたSoundcellを正確に並べ変えるというゲームです。中には、一部リズムの変化や音高の変化を加えたVariation Soundcellが混ぜられており、合計8つの中から間違いのないようOriginal Soundcellを並べ替えていきます(図3)。プレイ時間や間違えた数などを評価指標に使用します。これまでの研究では、Soundcell
Methodの課題の達成者と非達成者は、認知機能テストに相関があると結論付けられています。
[図2:Soundcell] |
[図3:ゲームの進行] |
全体のデザインは木目調とし、温かみがあり誰にでも受け入れられやすいデザインとしました。また、高齢者が操作しやすいように、複数パターンの中から、文字の大きさ、位置、フォントなどを決定しました。プレイ画面については、プレイ中に誤操作とならないような配置、説明書がなくてもわかるようなデザインに心掛けました。
また、本アプリのプレイ終了後にも、もう一度やってみたいというモチベーションとするためには、ゲームを中途半端に終わってしまうことのないような誘導が必要でした。
図5の正解誘導画面のように、矢印とコメントを追加し、誘導するような演出や完成時には鐘の音と共にメダルが出てくるなど、高揚感が出るような演出を盛り込みました。ゲーム終了後には、履歴画面へと遷移し、過去に獲得したメダルを確認することができるページを設けました。メダルが溜まっていく演出も取り入れています。
[図5:もう一度やりたいという気持ちを喚起する演出] |
■今後の展開
弊社で提供している既存のプラットフォーム『LASHIC-care』ユーザへのリリースを行い、多くの方のプレイ結果がビックデータとして蓄積し、精度の高いフィードバック機能を実装できると考えています。認知症初期の傾向を掴むことができるアプリの実現に向けて、さらなる機能改善を図っていきたいと思います。
■期待できる地域への波及効果
静岡市地域包括ケア推進本部を中心に「認知症ケア推進センター」が2020年11月に開設されました。本事業の成果物や研究プロセスは、認知症ケア推進センターを利用する認知症の本人や、家族への直接支援・支援環境整備に展開することができると考えています。また、センター内だけではなく、弊社が展開するLASHICプラットフォームに乗せ、全国への展開を行い、間近に迫る認知症高齢者700万人への対策の一翼を担いたいと考えています。