[委託先団体] 清水魚株式会社
[連携大学] 東海大学海洋学部 水産学科 教授 後藤慶一
[連携団体] 海王丸漁業株式会社
清水港は冷凍マグロの水揚げ量が全国一位です。また、水揚取扱数量は千葉県銚子港の半分にも満たないのですが、単価の高いマグロを多く取り扱うことから水揚取扱金額は全国一位です。すなわち清水港は国内きってのマグロ基地であり、水産経済に影響が大きい役割を担っています。
しかし、「大間マグロ」、「三崎のマグロ」や「焼津のマグロ」などは、誰もが「美味しい」というイメージをもっており、マグロのブランド化に成功していますが、清水港は全国でも指折りのマグロ基地であるにも関わらず、前述のブランドマグロよりも知名度が低いのが現状です。その理由として、清水マグロの「おいしさ」が十分に伝わっていないこと、清水港の主要な取り扱いマグロはメバチマグロであることがあげられます。
メバチマグロはクロマグロやミナミマグロと比較して身質が水っぽく、あっさりとした食味のため、とても美味しいマグロとしては認知されていません。しかし、メバチマグロの中にも脂がのり、クロマグロやミナミマグロにも匹敵するような一際美味しいとされている個体も存在しており、清水港ではそれらの個体が最も多く流通しています。東海大学の後藤教授の研究室では、2015 年度より魚の刺身の特徴の可視化について研究を行っており、これまでに美味しいメバチマグロが脂質などの特徴のバランスで定義づけできることを報告しています(スペシャルメバチマグロ)。
そこで、しずまえ振興協議会(※)の調整のもと、東海大学と清水魚株式会社、並びにしずまえ振興協議会メンバーとの連携で、昨年度策定したスペシャルメバチマグロの定義の検証とブラッシュアップを行い、美味しいメバチマグロの定義を決め、その定義に合致するメバチマグロを「清水極上船凍メバチ」と命名してブランド化を目指すこととしました。
(※)しずまえ振興協議会:静岡市経済局農林水産部水産漁港課しずまえ振興係がコーディネートする、静岡市で前浜で水揚げされる水産物の振興を目指す市内事業者からなる協議会
官能評価および物理化学的分析結果に基づき、人の嗜好を反映した分析型のメバチマグロの可視化図を作ることができました(図2)。その図において、真の清水極上船凍メバチは、私たちが目指す定義に合致した位置でグルーピングされました(F2、F8、F10、G1およびG2)。このグループに入る個体は、私たちが自信を持って提供できる個体です。一方、これら美味しい個体を客観的に定義できる成分項目は、今回の解析では成分(脂質、タンパク質、水分)に紐付く項目だけになってしまいましたが、色調や物性も美味しさには影響しており、これらの項目の定義付けのために更なる詳細な検討が必要であることがわかりました。ブランディング活動の一環として、清水極上船凍メバチのプロモーションを清水港マグロまつり等で行いました。
[図1:清水極上船凍メバチの可視化図] |
(※)図中アルファベットと数字の組み合わせは体番号を示します。FとG検体は 2021年度に評価した検体で、それ以外は以前評価した検体です。中心から 各矢印の方向にのびると、それぞれの特徴が強いことを意味しています。 |
美味しいメバチマグロの可視化をすることができました。美味しいメバチマグロに関連する客観的な項目は、脂質、タンパク質および水分の比率で、一定の選別を行うことができると考えられました。今後は、この項目の範囲に入る魚体の選定方法を市場関係者と協議し、市場での選定方法の落とし込みを行い、その相関を理解した尾切り選別担当者と協議し、美味しいメバチマグロを選別していく予定です。さらに、簡易測定装置の開発なども視野に入れて、美味しいメバチマグロのブランディングの取り組みを継続していきます。