[委託先団体] 隠れ茶を守る会
[連携大学] 東京農業大学生命科学部 分子微生物学科 教授 内野昌孝
[連携団体] アイウエシカル、お茶と暮らしの研究所、SUI/TEN
芳香性分析および成分分析により「食べる発酵茶」(“食べるお茶・発酵ほろにⓇ”と命名・商標登録)の特性・機能性を明らかにし、さらに、付加価値を高めるために乳酸菌と酵母菌を組み合わせる発酵研究を目的としました。また、日本初の「食べるお茶・発酵ほろにⓇ」という食品に対するメニュー開発により、使いやすい商品として販路を広げ、梅ヶ島での新しい名物ができることで旅館・土産物店への誘客にもつながり、後継者獲得、雇用創出を目的としました。
香り・味・食感を吟味し、新芽及びあと芽から22-@及び22-Hの実験区を選定し、各種機器分析を行いました(図1)。
[図1:実験区22-@と22-Hの芳香性成分比較] |
芳香性成分についてガスクロマトグラフィー/質量分析計(以下GC-MS)で測定した結果、新芽の22-@において、Linalool(花様)及びNerol(柑橘様)が検出され、22-H(あと芽)においても、Linaloolが検出されましたが、面積値は22-@の1/4程度でした。このことから、食べる発酵茶は新芽の方があと芽より高い芳香性を有することが裏付けられました。
また、高速液体クロマトグラフィー(以下HPLC)により乳酸菌発酵前後の各種成分分析を行った結果、カテキン総量は22-@及び22-Hの双方で発酵により減少した一方、GA(没食子酸)は、発酵により大きく増加しました(図2)。全ての実験区で乳酸が検出されたことから、乳酸菌発酵が起こったことが示唆されました。さらに、グルタミン酸やグルタミンを含む多種のアミノ酸が検出され、特筆すべき点として22-Hに多量のアルギニンが含まれていることが明らかとなりました。
乳酸菌・酵母菌を組み合わせた食べる発酵茶に関して基礎的な研究も実施しました(図3)。スターター酵母選抜のため、梅ケ島地区で60種類の植物を採取し酵母菌を抽出し、菌42種が同定されました。この内、食品利用・分離報告のある植物に対応する4種の酵母をスターターとし、4菌種全ての酵母が1週間で増殖したことから、茶葉で生育可能であることが判明しました。
[図2:カテキン類とカフェインの分析] |
[図3:酵母菌茶葉添加試験] |
「食べるお茶・発酵ほろにⓇ」を使用したメニュー及びソースを試作し、梅ヶ島旅館組合や関係者に対して試食会を行いました(写真1)。どの様な料理やソースが好まれ、どの様な組み合わせが良いかなどアンケート調査を実施しました。
GC-MSによる芳香性成分分析により、新芽の22-@が、花や柑橘様の香気成分を有することがわかりました。また、HPLCによる成分分析により、食べる発酵茶には各種カテキン類及び多様なアミノ酸が含まれていることも明らかとなりました。この結果をもとに、消費者に向けて「食べるお茶・発酵ほろにⓇ」の特徴を提示できると考えています。
さらに、梅ケ島地区に生息する60種類の植物から酵母菌42種が同定され、このうち4種をスターター酵母の候補に決定しました。「食べるお茶・発酵ほろにⓇ」そのものを使用したメニュー及びそれをベースにしたソースを試作し、これらのメニューの試食会を実施しました。今後は、今回得た知見を活かし、商品の発売に向けた取組を加速させたいと考えています。