[委託先団体] 三和酒造株式会社
[連携大学] 東海大学海洋学部 水産学科 教授 後藤慶一
[連携団体] リカーショップおきつ
東海大学と連携して「静岡/清水テロワール(地域性)」を念頭に、清水港で海底貯蔵(水深2.5m)した高付加価値商品の開発を目的に、清酒に特化して基礎的な知見を得るための研究を行いました。
@遮光の必要性、Aロウ封入の必要性およびB海生生物の付着管理については解決に至りました。C酵母の違いによる特徴把握、D精米歩合の違いによる特徴把握、E製造年度の違いによる特徴把握、およびF発泡日本酒の貯蔵による特徴把握では、それぞれの特徴を官能的に把握でき、海底貯蔵に適する清酒を選択していく知見を得ることができました。
[写真1:引き揚げ後の清酒] |
[表1:グルコース、有機酸総量およびアミノ酸酸度の結果] |
“M310 酵母(全国型酵母)で仕込んだ35%精米歩合の純米大吟醸酒”や“静岡酵母の純米吟醸酒”では、チョコやカラメル様のまろやかな香りが認められ、付加価値向上という面での手応えをつかみました。メイラード反応の影響により、精米割合が低くなれば熟成の効果が高まることはブランディングの点でも有利であり、海底熟成のポテンシャルを発見できました。亀の尾米を用いた清酒や発泡清酒は、可能性を感じられるが変化に乏しい面があることもわかりました。
[図1:純米吟醸/ 静岡酵母(左列)、純米吟醸/M310/55(中央列)、純米大吟醸/M310/35 の官能評価結果のレーダーチャート(注)上段は味と外見、下段は香りを示す。] |
今後は、亀の尾米や発泡清酒は、貯蔵期間を延ばしてどのような変化が起るか確かめていきます。今回は、研究スケジュールの関係もあり4か月という期間であったため、より長期間熟成させ変化を確認することで、海底貯蔵の更なる付加価値を発見できると考えています。海底貯蔵特有の熟成として辛み成分が低減することも純米大吟醸などの高級酒で確認されており、さらに長期熟成を行うことでこれらの成分がどのように変化するのかを確認したいと思います。
予算と探索研究の目的の都合から、コントロールのバリエーションは5℃での冷蔵保存のみに絞りました。次回は、調査観点をしぼり、実際の海底熟成の海水温(20℃前後)に近い環境でのコントロールやN数を増やし、よりシャープに海底熟成の特徴を確認していきます。清酒の変化にメイラード反応が関わっていると考えられ、理化学分析と官能評価の結果を明瞭に紐付けすることが今回用いた手法では難しいものでした。メイラード反応は非常に複雑な反応系で、様々な物質が生じます。これらの物質の特定は容易でなく、この未解明の要因から熟成現象を理化学的に明確に示すのは困難でした。今後分析を行う際の手法については、メイラード反応の有識者も含め、改めて検討する必要があると考えています。
「静岡/清水テロワール」が完成することで、国内外に向けて静岡/清水エリアの代表的な産物としてPRすることを目指します。今回はその基盤を作ることができました。海底貯蔵酒のプレスリリースを行い、頒布を行うことや、清水エスパルスドリームプラザ、日本平おみやげショップ、富士山静岡空港等での販売を模索し、地域活性化につなげていきます。