[委託先団体] うしづまチーズ工場
[連携大学] 静岡県工業技術研究所食品科 主任研究員 袴田雅俊
[図1:酸凝固チーズの製造方法] |
近年、国産ナチュラルチーズに注目が集まっています。私たちは、静岡にこだわったチーズの製造を目的として、静岡県の土地で採取された乳酸菌からチーズ製造に使用できる乳酸菌を選抜し、酸凝固タイプのチーズを試作しました。
チーズ製造用の乳酸菌としてガスを出さず、乳糖を発酵し、牛乳中でよく増殖する菌株を選抜しました。静岡市は豊かな山と海があることから、静岡らしい乳酸菌として海洋の乳酸菌70株から選抜を行いました。
全70株から、ガスを出さない乳酸菌は44株、そのうち培地中の乳糖を50%以上乳酸に変換する株が13株、さらにその中から牛乳に接種して30℃、24時間でよく増殖する株を4株選抜できました。この4株はIs50、Is117、Is118、In17という識別番号の付いた菌株でした。この4株を用いて、ナチュラルチーズの中でも乳酸菌の特徴が活かされる酸凝固タイプのチーズ試作に取り組みました。
試行錯誤の結果、選抜した株からの酸凝固チーズ製造条件を確立しました。いずれの乳酸菌でも酸凝固チーズを形にすることができました。Is50株で試作したチーズはヨーグルトのような香りの強いチーズとなりましたが、他の乳酸菌株と比較すると乳のpH低下速度が遅い傾向がみられました。Is117株、Is118株で試作したチーズは酸味が強く、ボソボソとした印象のチーズとなりました。In17株で試作したチーズは味、香りも良く、乳のpHも順調に低下しました。このことから、In17株を静岡チーズ用乳酸菌として選抜しました。In17株はシラス由来の乳酸菌で、同定の結果Lactococcus lactisという種類の乳酸菌でした。
試作した酸凝固チーズについて香気成分を分析したところ、バターやヨーグルトのような香りの乳酸菌産生成分として知られるジアセチルが多いことがわかりました。このことから、乳製品をイメージする香りやすっきりした印象のあるチーズとなることが期待されます。
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[写真1:香気成分分析装置] |
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[図3:ジアセチルの測定結果] |
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[写真2: 酸凝固タイプの静岡チーズ] |
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[図4: パッケージデザイン案] |
開発した酸凝固チーズの販売を見据えてパッケージをデザインしました。今回作成したパッケージ案では、静岡らしさとして富士山を、海洋由来の乳酸菌を使用していることから海を描きました。販売に向けて準備を進めています。
静岡でしか作れないチーズの開発を目指して、静岡由来のチーズ用乳酸菌の選抜とチーズの試作を行いました。乳酸菌は駿河湾由来の70株から選抜し、ガスを産生せず、乳糖を分解し、牛乳中でよく増殖する乳酸菌を4株得ました。この4株を使って酸凝固タイプのチーズを試作し、味、香り、製造のしやすさから駿河湾シラス由来の株を選抜しました。この乳酸菌で試作したチーズにはジアセチルが多いことがわかり、酸味もあってすっきりしながら甘い香りを持つチーズとなりました。