[委託先団体] インフィック株式会社
[連携大学] 静岡文化芸術大学 デザイン学科 教授 小浜朋子
[連携団体] 有限会社ト・ヘン、株式会社Carecon
認知症は早期発見が重要ですが、現在認知症のスクリーニングテストとして活用されている評価方法(MMSE等)には抵抗がある人もおり、早期発見の障壁になっています。有限会社ト・ヘンの佐野氏が考案した「Soundcell Method」は、高齢者の認知機能の評価ツールとしての可能性が検証されています。そこで、本ツールをアプリ化し、楽しみながら評価できることで、被験者からの印象も良く、ストレスの少ない形で認知症の傾向が把握できるのではないかと考え、令和2年度の本事業(応用コース)においてアプリのプロトタイプを完成させました。
次のステップは、高齢者が抵抗感なくゲームを日常的に実施できるための課題解決を図ることです。また、取得したプレイ履歴、身体情報・生活情報をもとに、機械学習等を通じて、次に想定されるヘルスケアサービスをシステムにて自動マッチングし、レコメンドする仕組みづくりをすることです。これより、高齢者の行動変容を促し、介護予防・未病等による健康寿命の延伸につなげていくことができると考えました。
■「Soundcell Method」とは
図1のように、短い音楽フレーズで構成されたSoundcellを正確に並べ変えるというゲームです。中には、一部リズムの変化や音高の変化を加えたVariation Soundcellが混ぜられており、合計8つの中から間違いのないようOriginal Soundcellを並べ替えていきます(図2)。プレイ時間や間違えた数などを評価指標に使用します。佐野氏の研究では、図2のように木のブロックをならべることで音が変化するという装置になっています。背景研究においてSoundcell Methodの課題の達成者と非達成者は、認知機能テストに相関があると結論づけています。
[図1:Soundcell] |
[図2:ゲームの進行] |
■導入時の課題
ゲームの全体像が理解できるような動画再生ボタン(遊び方をみる)を追加し、ゲームイメージを最初に理解した状態でゲームに臨めるような機能を追加しました。スタート時点で躓き、ゲームの継続性が下がるといった対策の一手になりました(図3)。
[図3:動画再生ボタンで解説動画が再生] |
■プレイの継続性
高齢者自らが継続してプレイしたいと思えるよう、
ゲームとしての娯楽性を高めることが重要であると考えました。一定の曲数の増加に加え、ゲームを途中で終えることなく、回答にまで誘導できるようなUI/UXの導入の検討を行いました。曲数を2曲から3曲(もみじ、ふじの山、花)追加し、合計で5曲としました。
■データ取得方法
アクト数、達成度、達成時間、平均アクト時間のプレイ情報を収集するとともに、弊社が展開するLASHICシリーズのLASHIC-home のアカウント情報との紐づけを行いました。
現在、LASHICシリーズは全国4,000台が課金稼働しており、センサを通じて、身体情報、環境情報等を取得し続けています。これらのデータベースに本アプリが連結することで、より対象者のパーソナルなデータの蓄積が可能と考えられます。音楽アプリで得られる情報は、センサだけではわからない要素を含み、過去記録との比較にて、異常や異変に事前に気が付くようなことも可能になると考えています。