[委託先団体] 農事組合法人みらい
[連携大学] 静岡県立農林環境専門職大学生産環境経営学部 生産環境経営学科 准教授 丹羽康夫
[連携団体] かもかし
静岡市清水区両河内地区の一軒の農家でのみ栽培されていた在来大豆は、大粒で味わいが上品なため、市販の大豆より高値で取引されており、「ここ豆くん」と名付けられました(写真1)。ここ豆くんの保存と中山間地域の活性化を目指し、これまでに感覚的に表現されてきたここ豆くんがもつ特徴を科学的に明らかにするとともに、その存在を広く世間に知らせるために、その特徴やポテンシャルを最大限に活かした和菓子開発を目的としました。
加えて、ここ豆くんと身延町曙地区のあけぼの大豆について、DNAレベルでの比較を行うことで両者の差異を明らかにすることとしました。
ここ豆くんのショ糖含量は10.5g/100gで、平ら(日本食品工業学会誌36巻,968-980)による栽培大豆105品種の平均値6.4の1.6倍であり、あけぼの大豆の7.3、文献最大値の9.64をも上回り、データとして確認できる大豆の中で唯一10g/100gを超えて最大値を示すことが明らかとなりました(図1)。
さらに、アミノ酸の旨味成分であるグルタミン酸も文献最大値の2倍以上(図2)、また、運動の持久力に正の影響を及ぼすとされる3つの分岐鎖アミノ酸(BCAA)の含有量も高いことが明らかとなりました(図3)。
また、遺伝子解析の結果、ここ豆くんとあけぼの大豆とはDNA レベルで非常に近縁であることがわかりました。
[図2:うまみ成分含量の比較] |
[図3:BCAA含量の比較] |
今回確立した前処理条件により調製した在来大豆を用い、「焼き菓子」「蒸し菓子」「きんつば」「大福」の4種類の和菓子を試作しました。アンケート調査の結果、「きんつば」と「大福」は完成度が高く、外観や食味でも高評価でした。
しかしながら今回の開発では、ここ豆くんの魅力を最大限に活かすことを目指したため、外観の評価は低いながらも食味の評価が高かった「蒸し菓子」に焦点を絞り、さらに改良を加え、商品開発をすることができました(写真2)。
これまでに、「旨味が感じられ後を引く美味しさ」等の感覚的な感想に対し、科学的に分析したことで、一般大豆と比較してショ糖で1.6倍、グルタミン酸では2倍以上多く含まれていることがわかりました。さらに、分岐鎖アミノ酸である3つのアミノ酸の含有量も多めで、食味の良さに加えて機能性成分量も多いことが明らかとなりました。
ここ豆くんの旨味と塩味を効かせた蒸し菓子を軸として、さらなる商品のブラッシュアップをおこなうことで目的とした和菓子の開発ができました。