[委託先団体] 山梨罐詰株式会社
[連携大学] 東海大学海洋学部 教授 後藤慶一
[連携団体] 株式会社イワサキ経営、静岡県工業技術研究所
静岡県はまぐろ缶詰の生産量日本一であり、缶詰製造は重要な産業といえます。しかし、製造工程でDHA・EPAといった有用成分が煮汁として流れ出てしまいます。
そこで本研究では、流れ出た機能性成分を回収し、缶詰への再添加に挑戦するとともに、缶詰の素材としてヤーコンを選択し、まぐろと抱き合わせた新しいおかず缶詰の開発を目指しました。
当日排出された煮汁(97.37s)を遠心分離した結果、油分(0.84s)を回収でき、その油分の機能性成分量は100gあたりEPAが3.4g、DHAが19gでした。回収分離は可能であると判明しましたが、回収後の油分は魚の臭いが残存しており、過酸化物価も高いことから、いかに酸化させずに回収・分離を行えるかが今後の課題です。
[図1:煮汁の遠心分離] |
[図2:ヤーコンに含まれる甘味成分量の経時変化] |
フラクトオリゴ糖を豊富に含むヤーコンを栽培し、収穫後のフラクトオリゴ糖の経時変化を調査しました。その結果、2か月程度で約30%が果糖などの糖に分解されることや、保存期間によって食味が変化するため、ヤーコンは収穫後速やかに加工する方がよいことも判明しました。
アンケート結果などから20〜30代女性をターゲットに定め、コンセプトを「時短」「そのまま皿に出せる」に決定し、和風とイタリアン風で試作を行いました。計算上1缶(80g)あたりDHA・EPAが合算で528mg、フラクトオリゴ糖が1g含まれるおかず缶詰を試作できました。
[写真1:試作品(左:和風、 右:イタリアン風)] |
これまで廃棄されていた煮汁から機能性成分を回収することができ、わずかですが試作品に添加することができました。しかし、臭いの問題が残されているため、今後は臭いの原因究明と煮汁の分離・抽出方法の確立を目指します。