[委託先団体] するが夢苺株式会社
[連携大学] 静岡大学農学部 教授 鈴木克己、静岡英和学院大学短期大学部 教授 前田節子
[連携団体] 一般社団法人あおい文化交流研究所
100年以上の歴史を持つ静岡市の久能石垣イチゴですが、高低差がある山の中腹を利用しているため、石垣を組み直す作業、多棟ハウスの窓の開閉作業などが重労働のため苦戦しています。 |
[写真1:石垣イチゴ] |
石垣の隙間にイチゴ苗を定植していた従来法に変え、育苗ポットを直接定植する技術を開発しました。ポット下側にスリットを設け、根張りと養分の吸収も十分にできるようにしました。
大学での試験では、一般的な土耕栽培と石垣栽培を模した区をつくり、頂果房の開花日について調査したところ、平置きの60P区は慣行区に比べて有意に早くなり、傾斜区も含め、60P区で開花が早まりました。
[写真2:使用した育苗ポット] (左からUP、60LP、60P) |
[写真3:大学での栽培の様子] |
石垣イチゴ栽培で試したところ、初期に灌水が不十分で枯れた株も少しありましたが、正常に育った株ではその後の収量差は見られませんでした。また、石垣イチゴのハウスを連棟化して、自動巻上機を取り付け、内部の温度を精度よく管理できることを確認しました。以上のことから、育苗と換気作業の省力化に道筋をつけました。
[図1:石垣栽培における育苗ポット直接定植] |
端境期商品のためには、イチゴの風味を損なわず乾燥粉末化が重要です。従来までイチゴは難しいとされていましたが、「マイクロ波減圧乾燥機」の利用により、色や香りを損なわず、砂糖等も使用しないイチゴパウダーの作成ができました。このパウダーを利用して、久能石垣イチゴスイーツ新規商品の開発を行いました。また、イチ ゴの収穫時期には、パン生地で生イチゴを包み焼成した「久能石垣イチゴパン」を試作し、フランス料理レストラン(アンテラス)と連携し「久能石垣イチゴ尽くしメニュー」を開発しました。
[写真3:生イチゴを利用した加工品とイチゴ尽くしメニュー] |
自動開閉装置を備えた連棟ハウスで、ポット苗直接定植による不耕起栽培を行うことで、石垣イチゴの省力栽培が可能になりました。今回作成した商品を地元のベーカリーで購入することや、フレンチレストランでのイチゴ尽くしメニューを味わうことは、イチゴ狩りに伴うレジャーの多様化につながり、客層の拡大が期待できます。
以上のような取り組みにより、久能石垣イチゴの生産性向上、生産地としての魅力の強化、今後の発展が期待でき、静岡市の農業、観光業、産業を合わせた6次産業化に貢献すると思われます。