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地域課題に係る産学共同研究委託事業

令和5年度 研究成果 GrandFarm

基礎コース

農産副産物を活用した新規な育苗セルトレイの開発と性能評価

[委託先団体] GrandFarm株式会社
[連携大学] 静岡県立農林環境専門職大学生産環境経営学部 教授 菊池宏之、杉山恵太郎
[連携団体] 株式会社鈴生

目的

SDGsの12目標「つくる責任 つかう責任」において、私たち農業は、野菜を生産する責任と共に廃棄野菜への責任のもと、プラスチック製資材を減らし環境に配慮した資材を使用する責任があると考えています。そこで、株式会社鈴生のグループ企業から提供された農産副産物(ブロッコリー、枝豆、ほうれん草)を活用し、オール植物由来で環境にも優しい新たな育苗セルトレイを開発し、実際の農業現場において実用的であるのか性能評価・検証を行いました。

①モールド加工技術を応用し最適な製造条件について
②検証実用的な育苗トレイであるのか紙質試験および生分解性試験
③農福連携の観点からビジネススタイルの検証

農産副産物がプラスチック製品に代わる育苗セルトレイに生まれ変わり、再び農業現場で活用し、安全に土に還す持続可能な環境循環型農業モデルの礎となることを目指しています。

研究成果

ほうれん草(水耕栽培の根の部分)、ブロッコリー(茎の皮)、枝豆(葉、枝、実)を乾燥パウダーにした後、国内屈指のモールド加工技術を持つプラス産業株式会社(静岡市)にて、128穴の育苗トレイ
(30mm×30mm×50mm(45.0ml))の4マスの金型を完成させました(図1)。

[図1:金型製造設計図(プラス産業株式会社提供)]

[写真1:育苗セルトレイ試作品]

野菜パウダーの最大配合率は30%でした。30%以上配合すると、紙を金型から外す際に破れてしまう現象が生じたため、野菜パウダー:紙パルプ=3:7の配合比が成型性・形状ともに良好なトレイを形成できる適度な配合率であることがわかりました(写真1)。

また、当試作品が実用的な育苗セルトレイであるのか紙質試験および性能評価として、①紙面pH試験 ②引張強度試験 ③圧縮強度試験を実施しました(表1)。

[表1:紙質強度試験結果]

検体名  pH 平均値 引張強度值(kg)压縮強度值(kg)
ほうれん草H(10%)5.43.758.0
ほうれん草H(30%)4.82.06.0
ブロッコリーB(10%)6.03.08.0
ブロッコリーB(30%)6.02.256.0
枝豆E (10%)6.42.58.0
枝豆E(20%)6.41.58.5
おからO(30%)6.42.53.0
パルプP(100%)6.41.64.0

[写真2:育苗の様子]

育苗試験においては、プラスチック製のトレイに比べると生育速度は劣るが、最終的に同じ大きさのリーフレタスに成長しました。また、土耕区では、10日過ぎから土中のトレイ表面にカビが見え始め、20日を過ぎると表面が崩れ始め、掘ってみるとトレイの強度は弱くなり、使用しているうちにトレイは、植物残渣を入れたところから分解しはじめ、型崩れしていきました。これは土壌中に還っていくことを裏付けるものであります。

農福連携の観点からビジネススタイルを検証すると、加工や販売などに取り組む施設は、そうでない施設に比べて平均工賃月額が高く、年間の売上高を見ると、加工から販売まで行っている施設の平均が732万円と高く、6次産業化を図ることによる売上等への効果が大きいことがわかります。新規育苗セルトレイが商品化されることになれば、新たな雇用が生まれ、工賃向上にも繋がります。

まとめ

形状や用途などの改善を図っていきながら、家庭用野菜や花などの苗用ポットの代替品のチャンスがあると考えています。消費者の脱プラスチックの意識が高まる現在、ホームセンターなどから購入した野菜や花の苗を苗ポット付きでご自宅の庭またはプランターにそのまま植えることができる簡単かつエコな商品として販売できるのではないかと考えています。何よりも廃棄物が出ないという地球に優しいエシカル商品です。消費者の意識も変化しており、いずれ受け入れられる時代はそこまで来ていると考えております。

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