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地域課題に係る産学共同研究委託事業
基礎コース
生おからの食用利用を行うための衛生調査ならびにおからとマグロを用いた食品開発に向けた最適配合の研究
[委託先団体] 株式会社オカラテクノロジズ
[連携大学] 東海大学海洋学部 教授 後藤慶一
[連携団体] 静岡県工業技術研究所
目的
豆腐を製造する過程で出てくる「おから」は、低糖質、高食物繊維で、植物性タンパク質も含まれており、栄養価が豊富なスーパーフードである一方で、雑菌がすぐに繁殖してしまうことと、買い手が少ないことから、年間およそ70万トン出るうち、食用利用されているのはたった1%程度です。静岡県は豊かな水源に恵まれていることから、豆腐製造も盛んで、出荷額ベースでは日本で第7位を誇ると同時に、大量のおから廃棄問題も抱えています。
本事業では、静岡県内のおからを用いた衛生調査を実施し、おからを安全に食用利用するための方法を検討しました。同時に、おからとマグロを配合した商品の試作品を作成し、その商品化に向けた可能性を検討しました。従来のおから商品は、小麦の代替品としておからを用いた低糖質訴求のものが大半でしたが、おからには植物性タンパク質も含まれているので、マグロと合わせることで、動物性タンパク質と良質な脂質も摂ることができる魅力的な商品に昇華させることができると考えました。本事業が目指すマグロを配合したおから商品は、近年ニーズが増え続けている「ボディメイク」「ダイエット」需要を満たせる高タンパク商品を目指しており、食品としての物性を評価するとともに、マグロの種類・部位の選定や配合の決定を行いました。
成果
1.おからの衛生調査について
静岡県内の豆腐事業者2社のおからを採取し、表1~6に示す様々な条件でおからを保存・解凍の上、微生物試験を行いました。
その結果、生おから回収からの経過時間や、解凍してから使用までの時間、保存温度及び期間などの因子が菌数に影響を及ぼしていることが明らかとなりました。そのため、生おからの食用利用においては、常温環境下におく時間を長くとも6時間以内の可及的短時間とすること、冷蔵保存についても可及的短時間とすること、初発菌数を低減するため、生おからの回収までに汚染を受けないよう工夫することが重要であると考えられます。
[表1・2:S社おからの衛生調査]
条件
A表1:S社おから採取後、冷凍庫に入れるまでの時間の経過に伴う菌数変化 目 的 おからが出てから何時間以内に冷凍保管すれば安全かを調べるため 方 法 採取後、常温(30°Cのインキュベータ)で保管し、冷凍庫(-20°C)に入れる 常温保管時間 0時間 1時間 2時間 4時間 6時間 一般生菌数(CFU/g) 0 4.0✕10¹ 0 0 6.0✕10¹ 大腸生菌数(CFU/g) 0 0 0 0 0 条件
B表2:冷凍保管したS社おからを常温で保存する時間の経過に伴う菌数変化 目 的 冷凍保管したおからを、解凍後、何時間以内に使用をすれば安全かを調べるため 方 法 採取後、ただちに冷凍庫(-20°C)に入れて保管。後日、常温(35°Cのインキュベータ)に移動させる 常温保管時間 6時間 12時間 24時間 48時間 72時間 一般生菌数(CFU/g) 0 6.7✕10³ 5.0✕10⁴ 2.2✕10² 6.9✕10² 大腸生菌数(CFU/g) 0 0 0 0 0
[表3~6:T社おからの衛生調査]
条件
A表3:T社おから採取後、冷凍庫に入れるまでの時間の経過に伴う菌数変化 目 的 おからが出てから何時間以内に冷凍保管すれば安全かを調べるため 方 法 採取後、常温(30°Cのインキュベータ)で保管し、冷凍庫(-20°C)に入れる 常温保管時間 0時間 1時間 2時間 4時間 6時間 一般生菌数(CFU/g) 9.0✕10¹ 9.0✕10¹ 4.0✕10² 5.1✕10² 9.0✕10³ 大腸生菌数(CFU/g) 0 0 0 0 0 条件
B表4:冷凍保管したT社おからを常温で保存する時間の経過に伴う菌数変化 目 的 冷凍保管したおからを、解凍後、何時間以内に使用をすれば安全かを調べるため 方 法 採取後、ただちに冷凍庫(-20°C)に入れて保管。後日、常温(35°Cのインキュベータ)に移動させる 常温保管時間 6時間 12時間 24時間 48時間 72時間 一般生菌数(CFU/g) 1.0✕10⁴ 5.2✕10⁶ 1.1✕10⁸ 3.0✕10⁸ 5.6✕10⁸ 大腸生菌数(CFU/g) 0 1.8✕10⁴ 8.4✕10⁵ 6.3✕10⁴ 7.0✕10⁵ 条件
C表5:冷凍保管したT社おからを常温で保存する時間の経過に伴う菌数変化 目 的 冷凍保管したおからを、解凍後、何時間以内に使用をすれば安全かを調べるため 方 法 採取後、ただちに冷凍庫(-20°C)に入れて保管。後日、常温(25°Cのインキュベータ)に移動させる 常温保管時間 6時間 12時間 24時間 48時間 72時間 一般生菌数(CFU/g) 2.3✕10² 1.4✕10⁵ 2.0✕10⁷ 2.3✕10⁸ 1.6✕10⁹ 大腸生菌数(CFU/g) 0 5.0✕10¹ 1.0✕10⁶ 4.5✕10⁶ 5.7✕10⁷ 条件
D表6:冷凍保管したT社おからを常温で保存する時間の経過に伴う菌数変化 目 的 冷凍保管したおからを、解凍後、何時間以内に使用をすれば安全かを調べるため 方 法 採取後、ただちに冷凍庫(-20°C)に入れて保管。後日、冷蔵(3°Cのインキュベータ)に移動させる 常温保管日数 0日 1日 3日 5日 7日 一般生菌数(CFU/g) 1.1✕10² 6.0✕10¹ 1.2✕10³ 3.4✕10³ 3.0✕10⁴ 大腸生菌数(CFU/g) 0 0 0 0 0
2.おからとマグロを用いた食品開発に向けた最適配合について
高タンパクなおから商品開発に相性が良いマグロの品種候補として、ビンチョウマグロとメバチマグロを用いて試作を行うことにし、それぞれのマグロを、赤身部分と脂身部分をわけて使用しました。その結果、メバチマグロの赤身を用いた試作品が最も試食会での評価が高い結果となりました(表7)。
一方で結着性に課題があったため、それを解決するためにこんにゃく由来の原材料である「ウルトラマンナン」を用いた試作・配合検討・物性試験を行い、水分添加率15%で配合を行なった試作品が最も評価の高い結果となりました。
[表7:マグロの種類・部位の選定]
マグロの
種類・部位マグロの部位 赤身 脂身 マ
グ
ロ
の
種
類ビンチョウ メバチ
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