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地域課題に係る産学共同研究委託事業
基礎コース
昆虫でヒラメとアワビは育つか?-循環型養殖事業の社会実装を目指して-
[委託先団体] 株式会社マルカイ
[連携大学] 静岡大学農学部 教授 笹浪知宏
目的
用宗港のしらす漁業は地域にとって重要な産業ですが、近年は不漁に悩まされています。しらす漁業のような小規模漁業の生き残りには、天然資源に頼らない新たな産業、例えば養殖事業への進出が必要です。しかし、養殖魚の餌の原料となる魚粉の価格は高騰し、供給も不安定です。アメリカミズアブ(BSF)は家畜や養殖魚の飼料として東南アジアやヨーロッパで大規模に生産されています。食品残渣などの安価な飼料で生産でき、成長スピードも速いことから、近年日本でも脚光を浴びつつあります。
そこで本研究では、BSFで代替した飼料により、養殖魚の飼育が可能かの検討を行いました。また、循環型養殖事業としての可能性を検討するため、BSF残渣を肥料とし、小松菜の栽培が可能かの検討を行いました。加えて、BSF飼料で育てた養殖魚を市民が受け入れ、購入してくれるのかを知るため、市民500人に対するアンケート調査を実施しました。
研究成果
■BSF代替飼料によるヒラメとアワビの育成
対象魚種としてヒラメとアワビを用いました。それぞれを3群に分け、市販飼料、市販飼料:BSF飼料=1:1(BSF含有率25%)またはBSF飼料(BSF含有率50%)を1日あたり体重の5%重量となるように与えて飼育しました。どちらの魚種も、市販飼料群と市販飼料:BSF飼料=1:1では、体重増加に大きな違いは見られませんでしたが、市販飼料群と比較してBSF飼料群では明らかに体重増加が小さく、成長が良くありませんでした(図1および図2)。
[図1:ヒラメの飼育]
[図2:アワビの飼育]
■BSF飼育後残渣の肥料としての効果
循環型養殖事業としての可能性を検証するため、BSFを育成後に残った残渣を市販の培養土と混合し、小松菜のプランター栽培を行いました。その結果、BSF残渣を10%添加した群で、培養土のみと比較して10倍以上に新鮮重量が増加しました。BSF残渣の小松菜の成長に及ぼす最適濃度を探索するために、BSF残渣の濃度をいろいろ変えたところ、BSFの添加量に応じて成長が良くなることがわかりました(図3)。
[図3:小松菜の栽培]
■BSF飼料で生産した養殖魚に対するアンケート調査
20代から60代の女性556人に対してBSFを飼料として生産した養殖魚に対するイメージや購入意欲、循環型養殖についてどのように思うか等の調査を行ないました。イメージについては「特にない」や「よくわからない」といった回答が半数を占め、今後どのように周知していくのかを考える必要があると思われました。一方、購入意欲については、約半分が「購入したい」と答え、その理由は「環境・(地球)に良い・貢献できるから」でした。また、循環型養殖については、「環境に良い・エコ」、「新たな取り組みを応援したい」と前向きな意見が多く認められました。
まとめ
BSFを利用した養殖魚の飼育・販売が可能になれば、食品残渣の有効利用につながり、SDGsの達成に大きく貢献でき、社会的注目度の高い産業としてPRすることができると思われます。本事業が大規模化し社会実装された場合、漁業関係者に対する雇用創出が可能となり、小規模漁業(しらす漁業)との共存に大きく貢献できるものと思われます。
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