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地域課題に係る産学共同研究委託事業

令和6年度 研究成果 三和建商株式会社

基礎コース

枯渇するリン資源の効率的な回収方法および高純度精製技術の開発

[委託先団体] 三和建商株式会社
[連携大学] 静岡大学工学部 教授 孔 昌一

目的

国内のリン資源は枯渇し、すべてを海外輸入に頼っています。なかでも高純度リン物質(黄リンとして)は、産業界用途(半導体やリチウムイオン電池材料など)でも益々期待される貴重な基礎資源であり、価格高騰が続いています。そこで、下水汚泥焼却灰や鶏糞など含有量の多い身近な副産物から、リンを高純度で効率よく回収する新規プロセスの技術開発を行います。さらに経済収支バランスも検討し、実用化の可能性評価を行います。

技術開発の実験では、電気炉2台を配置し、リン酸気化ガスを炭素還元により黄リンを回収する技術を活用した実験装置(図1)を製作、黄リン回収を確認し技術開発の実績を得ることを目的とします。

[図1:管状電気炉2台使用 実験装置イメージ] 

【反応プロセス】

今回の研究では、炭化材にリン酸を含浸させ、リン気化ガスを炭素還元領域で黄リンにまで反応精製するプロセス(図2)を目指しました。

[図2:黄リン反応プロセス] 

ここでは、リン酸含浸炭化材を約500℃で加熱しリン気化ガスを発生する区域Aと、約1,000℃で炭素還元反応を行う区域Bを分離し、リン気化ガスの通過過程で黄リンを精製するプロセスを用いています。この場合、リン酸(H3PO4)から黄リン(P4)の反応式は次のように推定します。 

4H3PO4 + 16C → 6H2 + 16CO + P4

成果

■実験結果①

電気炉B900℃で電気炉Aの加熱を開始、電気炉A333℃、電気炉B988℃で反応ガスによりガラス管内が薄黄色に変色。

実験終了後、出口接続部のシールテープに付着物を確認し(写真1)、静岡大学に分析を依頼しました。
 

[写真1:出口部シールテープ付着物]

図3でP 2pとP 2sのリンピ-クの他、533.2eV 01sと283.8eV C1sのピ-クを確認しました。
図4の1,035cm-1付近範囲はP-O結合の非対称伸縮振動に関連したリン酸を確認しました。
これらの分析の結果、リン・リン酸化物を確認しましたが、目標の黄リン99%濃度の回収までは確認できませんでした

[図3:XPSスペクトル解析図] 

[図4:FTIRスペクトル解析図] 

■実験結果②

電気炉A550℃、電気炉B1002℃で反応を確認、多量の白煙ガスの発生を確認しました。
【考えられる分解反応式
約215℃:2H3PO4 → H4P2O7 H2O
約300℃:H4P2O7 → 2HPO3 H2O
約350℃:2HPO3 → P2O5 H2O

五酸化二リン(P2O5)と見られる反応ガスを確認しました。 

[写真2:五酸化二リンとみられる白煙ガス発生の様子]

■まとめ

今回の開発では、電気炉B1000℃、N2流入量他の条件を固定し黄リン反応を確認するに留まり、黄リンの凝集液化には至らず目標達成は不十分であったが、五酸化二リンの反応など研究開発の方向性は確認できました。

また、五酸化二リン反応ガスの生成は、炭素還元反応が不十分と思われ、還元炭化材の充填率、気化ガスの通過接触効率を高める工夫が重要と判明し、今後、還元炭化材の充填率を高める炉出口部構造の改修を検討、黄リン回収及び反応最適条件を把握する研究開発を進めてまいります。