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地域課題に係る産学共同研究委託事業

令和6年度 研究成果 梅ヶ島くらぶ

基礎コース

梅ヶ島地区における温泉資源を利用した有機コーヒー栽培

[委託先団体] 梅ヶ島くらぶ
[連携大学] 静岡大学農学部 教授 松本和浩
[連携団体] 株式会社大野木荘、梅ヶ島温泉湯の華

目的

静岡市梅ヶ島地区では、人口減少、高齢化、そして主要産業であった茶業の衰退による耕作放棄地の増加が深刻な課題です 。また、梅ヶ島温泉郷の利用者も減少し、地域経済への影響が懸念されています 。本研究は、この状況に対し、地域資源である温泉熱を活用した有機コーヒー栽培という新たな試みを通じて、以下の実現を目指しました。

  1. 耕作放棄地の有効活用と新たな農業モデルの構築
  2. 「プラムアイランド(梅ヶ島)コーヒー」としてのブランド化と観光資源の創出
  3. 農業再生と観光活性化による、地域の持続可能な発展への貢献

成果

■挑戦1:温泉熱でコーヒーは育つか? ~栽培実験の実際~

コーヒー栽培に適した環境(年間平均気温約20℃、最低でも13℃以上)を、温泉熱を利用してハウス内に構築することを目指しました。

  • 実験概要:模擬温泉水を利用し、ハウス内の温度管理テストを実施 。
  • 結果:
    ・目標のハウス内温度約20℃に対し、平均温度12.4℃、最低気温は-2.4℃を記録 。
    ・ヒーターの水位低下による機能不全時以外でも、目標の13℃を安定して維持することは困難でした 。
    ・結果として、生育していた、多くの葉が落葉しました 。
  • 主な課題と今後の方向性:
    ・温泉水だけでの十分な加温は、現状のシステムでは熱効率に課題があることが判明しました。
    ・電気による加温はコストが高いため、今後は木材の端材やペレットといった梅ヶ島地域の未活用資源を利用した熱源確保など、新たなシステムの開発が期待されます。

[写真1:結実したコーヒーチェリー] 

[写真2:落葉したコーヒーの木]

■挑戦2:「梅ヶ島発」コーヒーブランドへ ~独自性と魅力の追求~

栽培実験と並行し、「プラムアイランド(梅ヶ島)コーヒー」としてのブランド確立に向けた活動も行いました。
 

  • 取り組み:
    ・島田市金谷の片山農園様より提供いただいた国産コーヒー豆を使用 。
    ・コーヒーチェリーを使ったお菓子作りや、通常のコーヒーに加え、静岡大学木村研究室の協力のもと、アナエロビック(嫌気性発酵)コーヒーといった特色あるコーヒーの試作を実施 。
    ・アナエロビックコーヒーは特有のフレーバーが生まれ、従来のコーヒーとは異なる新しい可能性を示しました 。

■得られた知見と地域への波及

・温泉熱を利用したコーヒー栽培は目標達成には至らなかったものの、ハウスの規模感に対する加温効果や、コーヒー栽培に必要な温度管理に関する貴重な実測データを得ることができました 。
・本プロジェクトに多くの関係者が関わることで、交流人口の創出といった面で地域社会に貢献することができました。
・中山間地域におけるコーヒー栽培の厳しさを改めて認識するとともに、今回の経験は、今後のさらなる挑戦に向けた重要なステップとなりました。

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